

子どもの頃に読んだ本には、不思議な力がありました。
ページをめくるたびに広がる紙のにおいが、
まるで魔法のスイッチのように世界を変えてくれたのです。
絵本の森を歩くと本当に木漏れ日が揺れ、
冒険物語を読めば足元の床が砂浜に変わる気がしました。
現実とはまったく違う、柔らかく自由な世界を、
私たちは頭の中で鮮やかに体験していたのだと思います。
しかし、大人になるにつれて、その感覚は少しずつ薄れていきます。
日々の仕事や人間関係、時間に追われる生活の中で、
私たちはつい「見えていること」「聞こえていること」だけで
物事を判断してしまいます。
すると考え方は狭くなり、選択肢も気づかぬうちに固定されてしまいます。
同じ場面に同じ思考で向き合えば、結果が同じになるのは当然です。
でも、本当はもっと自由に考えていいはずです。
子どものころ、本の世界を現実のように感じていた私たちは、
本来とても大きな想像力を持っていました。
その力を今の自分の課題にも使ってみるのです。
たとえば、お客様対応の問題を
「そよ風のように軽やかに届く言葉」で考えてみる。
サービス改善のアイデアを「天使の歌声が響く場所」を
思い浮かべながら発想してみる。
少し突飛に思えるかもしれませんが、思考の枠を外したとき、
これまで浮かばなかった視点があらわれます。
想像力とは、現実から逃げるための道具ではなく、
現実を変えるためのチカラです。
本を開いたときのあの感覚を、大人になった今こそ取り戻してみませんか。
頭と心が驚くようなアイデアは、
案外その「におい」の記憶から立ち上がってくるのかもしれません。
日本高速情報センター協同組合 代表理事 草野 崇