
決まったルートはありません。ただ歩きたい方向へ歩く。
それだけで、頭の中のざわつきが少しずつ静まり、
体の奥にこもっていた緊張がすっとほどけていきます。
現代の私たちは、目まぐるしく変化する情報の渦の中で暮らしています。
朝からスマートフォンに目を通し、メールやチャットで絶えず誰かとつながり、
仕事の締切に追われながら、家庭では家事や育児に気を張る。
休日でさえも「充実させなければ」と予定を詰め込み、
息をつく暇もなく過ごしている人が少なくありません。
いつの間にか、「立ち止まる」ことが後ろめたくなり、
「何もしない」ことに価値を見いだせなくなってしまった。
そんな生活は、まるでずっと息を止めて泳ぎ続けているようなものです。
私たちの体は、本来緊張と緩和を繰り返しながら、バランスを取って生きています。
筋肉だって、力を入れたあとにゆるめることで強くしなやかになるのです。
心も同じ。
ずっと張りつめていては、やがてその感覚は麻痺し、
大切なものすら見失ってしまうかもしれません。
だからこそ、散歩が必要なのです。
歩くことで、呼吸が整い、視界が広がり、自分の中に新しい余白が生まれていくのを感じます。
道端の小さな草花に目をとめたり、
どこかの家から漂ってくる夕飯の匂いにふと懐かしさを覚えたり。
そんな一瞬が、忙しさで置き去りにしていた自分自身を引き戻してくれるのです。
散歩は何かを得るための時間ではありません。
体と心をいったん解放し、自分の輪郭を取り戻すための時間です。
この春、書類やスマートフォンをそっと脇に置いて、外の空気を吸いに出てみませんか。
足元の土のやわらかさや、鳥の声のリズムが、きっとあなたの心を静かに整えてくれるはずです。
日本高速情報センター協同組合 代表理事 草野 崇
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